ブータン訪問記 日本語要約



ブータン王国



通称ブータンはインドと中国にはさまれている、世界で唯一チベット仏教を国教とする国家である。
民族はチベット系8割、ネパール系2割。公用語はゾンカ語と英語。首都はティンプー。 急速な
近代化のなかで、 欧米化の速度をコントロールしつつ、全体主義的な伝統を維持しようとする政治に
世界的な注目が集まっている。 前国王が提唱した国民総生産にかわる国民総幸福量 (GNH) という概念、
さまざまな環境政策、伝統文化保持の ための国民に対する民族衣装着用の半強制などがある。 国民
総幸福量(Gross National Happiness, GNH)とは、1972年に、ブータン国王が提唱した「国民全体
の幸福度」 を示す“尺度”である。国民総生産 (Gross National Product, GNP) で示されるような、
金銭的・物質的豊かさを 目指すのではなく、精神的な豊かさ、つまり幸福を目指すべきだとする考え
から生まれたものである。現在、 ブータン政府は国民総幸福量の増加を政策の柱としている。

政府が具体的な対策を実施し、その成果を 客観的に判断するための基準にするのが主な用途で、
1990年代からの急速な国際化に伴って、ブータンに 於ける、これまでの価値観を改めてシステム化
する必要があったという。2007年に初めて行われたブータン 政府による国勢調査では、 「あなたは
今幸せですか」という問いに対し9割が「幸福」と回答したという。


(L) パロ空港で出迎えた空港係員 (R) 交差点には信号機がない

(L) チンブーの野菜市場 (R) パロのメインストリート

パロの寺院

パロには豊かに実った稲穂の垂れる光景を目にしたが、1964年にブータンに赴任した日本人、西岡京治氏
の農業指導の賜物であり、その功績は現地の人々から高く評価されている。パロ・チュ川の上に、
ブータン最古の寺、「キチュラカン」、パロ・ゾンが建ち、寺院と地方行政とを司る。ブータン特有の
建物であり、裁判所もここに置かれている。パロ・チュに架かる「伝統様式の橋」は、両側から少しずつ、
せり出すように建造されているが、同じ様式の木橋が各地に復元されている。

ブータンの祭りは非常にユニークである。ツェチュという踊りはチベット仏教を広め、その威光を悪霊たちに
再確認させるために営まれる法要であるが、ブータン独特の舞である。各地で催されており、その土地に住む
人たちにとって大きな行事であり、この踊りを見に様々な民族衣装を纏い、各地から人々が集まってくる。

タシチョ・ゾンは国王のオフィスであり、宗教界の最高権威、ジェ・ケンポを頂点とするブータン仏教界の
総本山でもある。釘を一本も使用せず木組みを行うブータン特有の建築法で立てられたタシチョ・ゾンは、
その規模、荘厳な雰囲気で訪問者を圧倒する。タシチョ・ゾンの下を流れるティンプーのチュウ川に架け
られた木橋の欄干の両側には、数多くのダルシン(経文旗)が風にひらめいていた。


(L) パロ郊外のリンプン・ゾン (R) ダンスフェスティバルから帰宅する女性たち

(L) 伝統的なチンブーの橋、両側欄干を経文旗が彩る (R) ブータン独特の舞 ダンスフェスティバル

タクッアン僧院

ブータン寺院観光でのハイライトはタクッアン僧院であろう。登山口から急な斜面を2時間、標高2,800mのレスト
ハウス(カフェテリア)まで、さらに3,000m 以上の展望台まで登りが続き、そこから谷底へ700段の階段を下り、
噴流となって流れ落ちる滝のしぶきを浴びたあと、さらに200段の階段を上り、ようやく僧院にたどり着く。500m
ほど垂直に切り立った屏風岩の岸壁に鎮座している17世紀に建造された寺院の石段は冷たく、内部にはパドマサン
ババやその八変化相の像などがある。非常に珍しいブータン仏教の彫像が目前に迫る。しかし、カメラを事前に
預けねばならず、写真撮影は不可能である。
帰路は再び700段の石段を登りつめる。標高3,000mを超える展望台にたどり着いた時には、息が切れ脈が早まる。
生涯、もう2度と体験できない急傾斜を上下する登山道であった。


(L) 参道脇の水車小屋 (R) 遠くに聳え立つ岩山にタクッアン僧院が鎮座する


(L) 急流を利用した小型発電所 (R) タクッアン僧院


禁煙国家 ブータン

ブータンは2004年12月に世界初の「禁煙国家」となった。タバコ販売を全面禁止するものの、ホテル客室での
法的喫煙規制はないし、観光客に禁煙を強制するものではない。公共の場所は全面禁煙で、規制除外されている
ホテルの喫煙客室のみが 合法的に吸える場所である。 注意すべきは、禁煙客室を確保していないホテルでは、
旅行者にとっては三次喫煙被害を受けるリスクが 大きい。三次喫煙とは、喫煙者が密閉した部屋の中でタバコを
吸った後に蓄積された有害残留タバコ成分に よって、次にその部屋を使用した人たちが受動喫煙被害を受けること
を指す。特に古いホテルでは客室内の 壁や衣類に発がん性のタバコ残留物質が数層にわって付着、堆積しており、
アレルギー反応を含め、 身体的リスクは少なくない。 ブータンでは レストランを禁煙とするなど、受動喫煙
(2次喫煙)の知識はあっても、喫煙者が部屋や衣類に残す 残留有害物質 (3次喫煙)に関する知識はほとんど
ない。

ティンプーのホテル


(L) タージ・タシホテル南面 (R) ホテルプール

今回のホテル調査で驚かされたのは、その数は限られているものの、欧米の一流ホテルをはるかに上回る設備の
豪華さであった。ホテルゲストの大部分は裕福な白人層と思われるが、長期間かけてブータンの仏教伝統と豊かな
自然を楽しんでいるかのようである。ブータンはタバコの販売を完全に禁止しているが、経済的に外国人旅行者
に依存するところが大きいため、喫煙規制に関しては宿泊施設を除外し、その規制については責任者の判断に
委ねている。意外だったのは、首都ティンプーのホテルではタージ・タシ以外には禁煙客室は存在せず、すべて
のホテル客室で喫煙できることであった。ホテル担当者は喫煙者がチェツクアウトした後に部屋を換気し、場合に
より消臭スプレーを使用すると話しているが、タバコの有害物質は壁やカーテン、寝具などに長期間付着し、
宿泊客の健康を損なう。


(L) タージ・タシホテル特別室 (R) 禁煙客室廊下

ティンプーのホテルはタジ・タシ以外を除いて喫煙対策が全くなされていない。タバコの三次的被害を回避したい
人はタージ・タシの禁煙客室を予約するしか方法はない。



(L) シワリンホテルダイニングルーム (R) シワリンホテル仏壇

パロのホテル

国際空港のあるパロでは、調査した6ホテル中、4か所のホテルで喫煙客室を廃止して全館禁煙となっていた。
パロのホテル、シワリンは数少ないブータン資本のホテルで、広大な敷地にグリ−ンハウス、喫茶室、スパなどが
あり、本館では結婚式も挙げることが出来る仏教式の祭壇が設けられている。ナクーセルブティクは新しいホテルで、
ソーラー設備、LED照明などを設備し、今回のブータン旅行中、唯一、喫煙場所を指定した標識があった場所である。
両ホテルとも、スエーデンから導入した床暖房施設を備えている。シワリンとナクーセルブティク、共に推奨出来る
ホテルである。

ガントクパレスホテルは、かってブータンの王族が利用された宿泊設備で、いかにもブータンらしい雰囲気を
味わえる。ただ階段がとても急なこと、部屋での喫煙を許しているので、高齢者、非喫煙者向きではない。
アマンコーラの建物の素晴らしさには心を打たれるが、すべてダブルベットルームであり、一人旅、カップル以外に
は向かないであろう。また客室での喫煙規制を行っていないので注意が必要である。ウマパロは、日本でもよく
知られているホテルで大きな期待を抱いて訪れたが、特級ホテルとの印象にはほど遠かった。シワリン、ナクーセル
ブティク、ウマ、キチュレゾートは全館禁煙である。喫煙は建物外で行うことが出来る。

ホテルの選択

旅行代理店を通じた予約では、参加者は加算金を支払った のちに、上級ホテルにグレードアップすることが
出来るが、当時は禁煙客室に関する情報もなく、ティンプーとパロの主要ホテル客室の禁煙設定の資料は過去に
公開されていない。2012年に、筆者がブータンの主要ホテルの禁煙客室、喫煙客室に関し調査したが、これらは、
国際的に見ても、初めて公表されたものである。なお、個別ホテルの詳細は英語版を参照されたい。

最新情報


2022年9月: ヒマラヤ山脈の小国ブータンが23日、2年半ぶりに観光客の受け入れを再開した。1人1日当たり
200ドル(約2万8千円)の入国税を新たに課す。観光資源である自然環境の保護が狙いだが、若年層の失業が
増えるなど、厳しい経済の状況がある。 ブータンは人口80万人程度、標高7千メートル級の山々がそびえ、
豊かな自然と、素朴な人々の暮らしに支えられた、チベット仏教に基づく独特の文化がある。

Bhutan 2012
The country to prohibit a tobacco sale Tobacco Control Act of Bhutan 2010  Bhutan tour 2012
Bhutan temple 01   Bhutan temple 02 Bhutan Thimphu's hotels Bhutan Paro's hotels
Bhutanese king seeks stronger ties with Japan, consoles earthquake victims.


チベット仏教の国、ブータン日本語要約編
2011年11月執筆 2023年1月再編集
執筆 医学博士 宮本順伯
This Web site is link-free.
This information was provided by the Smokefree Hotel and Travel.
The articles were written in November 2011 and partly revised in October 2012,
by Junhaku Miyamoto, M.D.,PhD.
Information was added in January 2023.
Copyright(C) 2011 Junhaku Miyamoto, All rights reserved.

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