JRの受動喫煙対応




禁煙席ネットの分析の結果、普通車両に於ける禁煙達成率が、ある程度、ドメスチックな
喫煙傾向を表していることが分かり興味深い。JR北海道の「オホーツク」、JR四国の
「南風」、「あしずり」の普通車では喫煙席の比率が高く、問題だ。
問い合わせに対し、JR四国は「現時点では喫煙される方の要望もあるので、禁煙車を
増やす考えはないが、今後とも検討する」と返答している。このような禁煙達成率が
50%の列車がなお日本国内を走っていることは、その地域が、多くのタバコ中毒者を抱えて
いることを内外に広報しているようなものだ。公共交通機関の全面禁煙化が世界のトレンド
である中、日本の恥でもある。

こうした環境にあっても、地方交通線で走る普通列車は全車両が禁煙車である。ローカル線
を1両で走る電車または気動車も車両内での喫煙を禁止しており、2両から4両の車両編成
の列車を、全席禁煙の列車として運行しても、少しもおかしくない。喫煙車両の全面廃止が
最終目標であるが、その経過処置として車両の禁煙達成率を80%まで高めておく必要がある。

JR東日本の「はまゆり」、「南三陸」、「あいづ」、「妙高」、JR西日本の「かすが」、
「みえ」、「はるか」、「タンゴディスカバリー」、「だいせん」、「スーパーおき」、
「スーパーくにびき」、「SLやまぐち」、JR西日本・四国の「マリンライナー」、JR
九州の「ゆふいんの森」は、すでに100%禁煙の達成できた列車である。JR九州は車両
禁煙化に積極的で高い禁煙達成率を誇る。4両編成の「有明」、「きらめき」は全席禁煙席で、
付けられた列車名の如く輝いている。

伊豆急行、小田急の私鉄線路に乗り入れ運転している「踊り子」、「あさぎり」の喫煙
グリーン車両を除き、JR在来線を走るグリーン車両は、日本全土で全席禁煙席のみと
なっており、将来の鉄道車両の姿を先取りしている。グリーン車個室では、なお喫煙出来る
が、オープンスペースの車両内で100%禁煙を強制し運行していることは、列車編成上、
グリ−ン車が1両だけの事例が多いことも幸しているとは言え、誠に喜ばしいことである。

千歳空港間へ向かう「エアポート」、関西空港へ向かう「はるか」は、全席禁煙席である。
2002年の段階で、成田空港への特急、「成田エクスプレス」はグリ−ン個室を除き、
全席禁煙車となっていたが、その後、1両、または2両の普通喫煙車を復活した。時代
逆行も甚だしいと言わざるを得ない。競合する京成電鉄の8両編成のスカイライナーが
2両の喫煙車を残しているので、営業政策上復活したとも解釈出来るが、日本の主要な
公共交通機関であるJR東日本が、喫煙者の健康の観点からも問題の多い喫煙車両を
増やすなど論外だ。海外でさんざんな目に遭って来た喫煙旅行者は、成田から喫煙車に
乗って、ほっと一息つくのであろうが、タバコ主流煙の他に、喫煙車内で他の喫煙者からの
副流煙を吸い込み、自らの健康障害を悪化させる道に戻ることになる。

「成田エクスプレス」デッキの壁面には灰皿が設置され、デッキでの喫煙を認めている。
海外からの旅行客は、成田空港からの列車内でタバコ規制を取らない喫煙無法大国、
日本の姿を知る最初のステップともなっている。地方の特急列車でも、デッキでの喫煙
を容認しているケーが少なくない。
「リゾートしらかみ」は客室内は禁煙であるが、デッキで喫煙出来る。
こうした列車では発癌物質を含む有害煙が車両内に流れ込むとの苦情が絶えない。また、
多くの乗客は乗降する時に、タバコ副流煙の発癌物資を強制的に吸わされているのだ。
タバコ中毒者の要望に呼応したのであろうが、正当性のない例外措置は認めるべきでは
なく、禁煙車デッキでの喫煙行為は禁止すべきだ。もし、事態を放置すれば、法的には
健康増進法第25条違反と言うことになる。

   禁煙車デッキ壁面の灰皿

駅ホーム上にある喫煙所から強い刺激性のタバコの臭いが流れて来るが、その中に多量の
有害物質が含まれている。公共空間での禁煙が世界の常識である今、こうしたタバコ
中毒者を救済するような設備をホーム上に残しておく明確な根拠はない。通勤時間に限り
禁煙タイムを導入している駅もあるが、喫煙する乗客も見受けられる。自らを律すること
の出来ないタバコ中毒者にモラルを求めることは、どだい無理な話だ。JRはJTから
受ける広告収入利益のことと、乗客の健康問題とを切り離して考え、ホーム上の喫煙所を
すべて廃止すべきだ。健康増進法施行後、関東私鉄各社の駅構内での全面禁煙規制がとられ
ているが、当然過ぎる決定と言える。

座席予約の際に禁煙席が満席で、喫煙席に空きが多いことがある。しかし、いかなる時に
も、やむなく喫煙席に着席したという事態が、発生してはならない。新幹線車両において
は禁煙車両を増やしたというものの、依然として、喫煙車の比率が高い。タバコなしでは
いられないビズネスマンが多いことの反映であろう。禁煙達成率の低い特急や新幹線列車
では、喫煙車両数をゼロにして行く方向で、削減を続けて欲しい。

喫煙習慣者に喫煙車を存続させよとの声も少なくない。その理由は、喫煙車にはタバコを
吸わない人はいない筈なので、一切迷惑がかからないと言う。しかし、そうした主張には、
喫煙車の乗客が他の喫煙者の放散するタバコ副流煙を吸い込むことにより、タバコの悪影響
を数倍まで高めることを無視している。既に述べたように、喫煙者の吸い込むタバコ主流煙
に比し、副流煙は数倍の毒性があることが認識されていない。喫煙車両という閉鎖空間で、
喫煙者同士がお互いの健康を破壊し合っているのである。

喫煙者は自己の自由な判断で、「健康への道」を放棄しているで、それも致し方ないとも
言えるが、喫煙車両で働かざるを得ない車掌や車内販売員の健康障害が甚だ心配である。
そうした観点からも、単に要望があるから、需要があるから喫煙車両を残すのではなく、
すべての乗客、そしてJR従業員の健康障害を防止するため、JRは早急に全車両の全席
禁煙化を断行して欲しい。

列車という走る閉鎖されたコンパートメントでの全面無煙化は、航空業界での全席禁煙席の
実現した今、次に求められる行動である。今後、日本でも「人の集まるところでは喫煙は
出来ない」との意識が定着して行くことを願う。すべての環境に於いでクリーンで尊敬され
る國、健康日本へのルールつくりが強く求められている。


「2004年 東京都心レストランカフェ禁煙席ガイド・タバコ副流煙U」より転写
執筆 医学博士 宮本順伯 
無断転載禁止





2005年、2006年、2007年、JRの禁煙車両・喫煙車両に対する方針


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