受動喫煙防止法の賢い立ち上げ方
海外に学ぶもの
2009年 日本禁煙学会シンポジウム(札幌)




 

今回は、将来、国が立ち上げるであろう受動喫煙防止法につき、
そのノウハウを提言したいと思います。



受動喫煙防止法の目的は、施設で働く労働者と、施設を使う利用者、双方の健康を法令を定めて
タバコ副流煙の脅威からも守ることです。これは車の両輪にたとえられるもので、
どちらが欠けても条例の目的を果たすことが出来ません。



アイスランドでは、2007年にレストラン、カフェ、バー、クラブの全面禁煙を実施しましたが、
政府公報では、導入の主な理由は、レストランなどで働く従業員の健康を守るため。
これらの職業につく人はタバコの煙のない環境で働く権利があるとしております。



これが日本の現状です。喫煙席から禁煙席へタバコの有害煙 が流れております。
こうした煙の流れを断ち切るために、天井から床まで壁で遮断し、
空調システムを別とするのが「完全分煙」です。



日本ではこうした喫煙席と禁煙席との二つの空間をつくり、従業員が、それぞれの部屋で
サ−ビスを提供する方式が普及しております。しかし、従業員の健康を守ることが出来ないので、
この方式を受動喫煙防止法にとりいれてはなりません。2番目の方式は
タバコを吸うときにのみ利用する喫煙ブースで、これは時限立法の形で
認められております。勿論、喫煙ブースも設けない全面禁煙が最もよい方法です。



海外の先進国では2003年から(1)の方式を廃棄し、その後(2)の方式に移行しました。
しかし、この方式も今、廃止される方向となっております。
最近、地方自治体で「完全分煙」の店を「受動喫煙ゼロ」として認定、広報する動きがありますが、
タバコの煙の充満する喫煙席は絶対に「受動喫煙ゼロ」ではありません。
単に利用者の安全を考えて行っているものと思われますが、支援すべきではありません。

 

タバコ会社にとって全面禁煙方式は喫煙率の低下を招くので絶対反対です。
あらゆる心理的操作により条例を妨害します。不必要な不安をあおり、
設備規模による規制除外を働きかけ、法令の弱体化を図っております。



設備規模による規制差別を設けてはなりません。小規模施設ほど受動喫煙被害が大きいからです。
法令を定めて、これらの人々を救済するのは公的機関の役目です。受動喫煙防止法は、
規模の如何に関わらず平等に適応するものでなければなりません。



規制ラインの数字の根拠を説明できる人はおりません。喫煙ブースの設置を認めているものの、
100u以上を「全面禁煙」としたスペイン、ポルトガルでは、規模規制を撤廃すればすべて解決します。
しかし、100u以上を「完全分煙」としたとき、その垣根をとりはらうと大きな混乱を招きます。
解決は非常に難しいのです。



ここに示した考えは今回成立した地方自治体条例検討の際に出されたものです。
しかし、これはNOです。その理由、二つをお示しいたします。
営業上不公平となる問題と、短期間に設備資金を回収出来ないため、
極めて長期間、全面禁煙への転換は困難となることです。



次は、ファーストフード・レストランと居酒屋とを同じ業種として考えてはいけないということです。
ここにお示ししたように、ファーストフード店と居酒屋では客層が異なります。
また喫煙率も大きく異なります。居酒屋業界の声を受け入れて、
ファーストフード店の規制を見送るのは馬鹿げています。
海外では飲食店業界を、すくなくとも二つ以上に区分して検討しております。



先ず、ファーストフード店での全面禁煙を行うべきです。
その理由は、従業員、お客ともに若年層が圧倒的に多い。こうした店の
喫煙ルームがタバコを始めるきっかけを作りやすいという実態があります。
イギリスでは2007年にレストラン、バーの全面禁煙に踏み切りましたが、
2000年の段階でファーストフード店は全面禁煙となっておりました。
写真はスェーデンのファーストフード店です。

 

全面禁煙の考えを受け入れることが出来ない業界に対し、「先行規制」と「遅行規制」の考えを
導入する必要があります。喫煙者の多い業界を、他の業界から引き離し、数年遅れて
規制を実施するものです。もし、同時に行うとすれば、ここにお示しした3つの条件、
すべてを満たす必要があります。3つの条件に合致しなければ、
同時に喫煙規制の網をかけることは、ほぼ不可能と考えられます。



「先行規制」と「遅行規制」を実際に行った外国の例です。これにはレストランを先行規制し、
バーを遅行規制する場合と、オフィス、職場を先行規制し、飲食店を遅行規制する場合があります。

世界に先駆けてレストランの全面禁煙規制を行ったカリフォルニア州では、バーの全面規制を
4年後に行っております。51歳で肺癌で死亡した俳優、ウェイン・マクラーレンの活躍した
マルボロ・カントリー、モンタナ州では、同じく4年後に、オーストラリアでは10年後に
バーの全面禁煙を実施しております。
フィリップ・モリス社本社があり、タバコが主要な農産物であるバージニア州では、
2006年にオフイス、職場の全面禁煙を、今年、2009年に
レストラン、バーの全面禁煙を実施しております。



ホテル業界での規制ですが、ロビー、通路などは全面禁煙であるというのが世界の常識と
なっております。このエリアを禁煙としてもビジネスには全く影響がありません。
国は全面禁煙をホテル業を営む上での必要条件と定めるべきです。
他人の迷惑とはならない喫煙客室は、アイルランド、スェーデンなどの喫煙規制先進国でも、
上限を設けて認めております。ハワイ州で20%、コロラド州で25%です。

自主的な動きも広がってきています。北欧4ヵ国のチョイスホテルグループ、カナダ、
米国、カリブ海諸国でのシェラトン、マリオットホテルグループです。全面禁煙とし、すべての
喫煙客室、喫煙ブースを廃止したので、ホテル内では一切喫煙出来ません。



受動喫煙防止法制定の初期段階で設けられた喫煙ブースは廃止される動きが顕著となって
参りました。これらの国の飲食店には、過去に喫煙ブースがありましたが、今では全廃され、
スモーク・フリーとなっております。
空港にあった喫煙室も廃止されつつあります。ここに掲げた空港ターミナル内では一切
喫煙出来ません。ちなみに成田空港では42の喫煙室があり、世界で最も多いとされています。
国や自治体が、廃止の方向性の明確になった喫煙室設置への経済的支援を行ってはなりません。
その理由は二つ。「非健康的な施設への税金投入」など、ここにお示ししました。



喫煙室廃止の理由、3つをここにお示しします。
受動喫煙問題と、憲法で保障された平等の原則に反するためです。

 

ハワイの空港です。空港喫煙室廃止の理由は2次喫煙と3次喫煙回避のためです。



台北の空港では喫煙室をすべて廃止し、全面禁煙となりました。
空港ターミナルビル内では全く喫煙出来ません。



フランス国鉄では2007年に全面禁煙を実施、これに合わせて
あれだけ多かったドイツの喫煙車両、喫煙ブースは全廃されました。
隣国、スイス、スペインの鉄道も全面禁煙となっております。



官民共同の禁煙キャンペーンです。左は台湾第2の都市、高雄駅入口での標識、
右は国立台湾大学病院エントランスホ−ルで見た等身大のパネルです。



受動喫煙防止法の有効性を高めるためには高額の罰金制度が必要です。
アイルランドの飲食店には、違反者は3000ユーロ、
つまり、40万円を支払わねばならないと記載されております。



これが今回の提言の要旨です。

日本では3分の2の労働者が受動喫煙被害にあっているとの報告があります。
早急に受動喫煙防止法の検討、成立が求められております。




すでに全面禁煙を行っている主な国です。



日本は国際社会の一員として国際条約を守る義務があります。
「完全分煙」「規模による差別」など、
例外だらけの法令をつくることは断じて行ってはなりません。



「全面禁煙」は健康社会の掟です。



きれいな空気のもとで、働きたい、食事したい、過ごしたい。
そうした社会を創出するのが受動喫煙防止法です。








Dr. Junhaku Miyamoto, a director of 'smokefree.jpn.com.' spoke on the subject about the way how to establish a superb anti-smoking ordinance. He warned that creating smoking room in public indoor spaces are not the solution to prevent health hazards by involuntarysmoking, and it should be abandoned. The title of presentation is 'What is the best form of an anti-smoking law to create a smoke-free society in Japan'.

English version


2009年 日本禁煙学会シンポジウム(札幌)
2009年9月 「禁煙席ネット」主宰 宮本順伯
『禁煙席ネット』 サイトへのリンクは自由

general index towards smokefree society



The Second Annual Meting for Tobacco-Free Advocacy Japan
第2回 日本タバコフリー学会総会 東京


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