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IUD(子宮内避妊器具)



高い避妊効果を持つ避妊手段としてIUDがあり、95%以上の妊娠防止効果があるとされています。
IUDとは子宮内避妊用具の略称で、ポリエチレン製の器具を子宮内に直接挿入、留置して避妊効果
を期待するものです。特徴はピルのように毎日薬を飲む必要もなく、一度挿入すれば、何年もその
効果が持続する器具です。 今までに数多くの製品が市場に出回りましたが、現在ではテイル(尾部)
を保有するいくつかのIUD製品にしぼられて使用されています。

世界的に普及した IUDは1960年後半から普及したリップスループで、当院でも500人近い方に
挿入、その後も長年交換せずに経過をみましたが、20年以上挿入していても、器具本体の劣化は
ほとんど認められず、一旦子宮になじむと副作用も認められず、非常に高い避妊効果を示しました。

リップスループはスペリオールとの避妊評価を獲得した半面、1980年台の終わりには、米国で
ループの除去後に不妊症となったとの訴訟が相次いだので製造が中止されました。その後米社から
のライセンスを譲り受け、日本の会社で製造が再開されましたが、国産品はナイロン製のテイル
(尾部)が切れやすいなどの弱点もあり、流通上の理由でしょうか、現在では生産されていません。
リップスループの、長期的な唯一の欠点は、15年〜20年くらい挿入していると、閉経前後の年齢で
器具を除去するときに、たやすく除去できないケースがしばしば認められることでしょう。
1077年以来、我が国で使用されているIUDに「FD−1」があります。避妊効果は95%程度です。
2000年になってからは避妊効果を上げるために銅線をコイル状に巻き付けたIUD、 

「マルチロード CU250」
が日本でも発売され、99%以上の高い避妊効果があるとされています。

欧州諸国で多用されているIUDは、原則としてお産の経験のある経産婦を対象にしています。
その理由として 
(1) 頻度はごく低いのですが、IUD装着中に子宮の周囲器官に慢性炎症を併発して
(自覚症状はほとんどない)不妊症となることがあること、
(2) 未産婦では子宮内スペースが狭く、子宮が IUDを異物として排出するように働くため、
位置がずれたり、器具挿入後に、月経時の痛みと同じような腹痛を引き起こすことがあること、
などがあげられます。

IUDは子宮内膜に直接接触しているために、器具挿入後に子宮内膜の毛細血管を傷め、少量の
出血を引き起こすこともあります。一時的な現象ですが、IUDが子宮になじむまでの期間、月経血の
増加や月経が長引くこともあります。
IUDは月経量の多い方、しばしば不正出血を引き起こす人、出血し易い体質、強度の子宮変形、
子宮筋腫、子宮周囲に慢性炎症がある場合は使用できません。近年、性感染症に罹患された方、
性感染症リスクの高い方に対しては、IUDをおすすめ出来ません。子宮外妊娠の既往症のある方
には挿入出来ません。避妊効果の高い「マルチロードCU250」は銅アレルギーの方には禁忌です。
「ミレーナ52」は女性ホルモン剤を含有しておりますので、医学上、ピルの服用が適切でない方は
使用されない方がよいと思います。

IUDは月経の最中に挿入します。それは妊娠中の誤挿入防止のためと、月経中は子宮頸管部が
わずかに開口するので、IUDの挿入が容易となるためです。挿入した後は、次の月経終了後の
段階で装着の状態をチェックするための診察と超音波検査があります。異常がなければ2年後に
検診いたします。

薬剤を付加していないIUD「FD−1」および「リップスループ」には使用期限はありませんが、
銅添加の「マルチロードCU250」の使用期限は2年間とされ、新しい器具との交換が必要です。
「リップスループ」の生産は終了しており、現在使用できません。理由は判然としませんが、
2014年4月に「マルチロードCU250」の輸入販売が中止されており新規の挿入は出来ません。 
IUDすべてに共通することですが、最初の3ヶ月間に微量出血や軽い下腹部痛が起こることが
あっても、一旦子宮になじむと副作用もほとんどなく、非常に高い効果を持つ避妊器具です。
ただし、いずれのIUDの妊娠防止効果は100%ではありません。



 プロゲステロン(黄体ホルモン)添加のIUD 「ミレーナ52」


(左)2007年3月、プロゲステロン(レボノルゲストレル)放出子宮内避妊器具に関する学術集会が東京・
ホテルオークラで開催されました。
写真は講演するカルフォルニア大学(サンフランシスコ)教授(Prof.Philip D.Darney)
(右)ミレーナを子宮内に挿入したときの状態



避妊効率を高めるために銅添加のIUDが用いられていますが、同じような目的で合成
プロゲステロン(レボノルゲストレル52ミリ)を器具内に 埋め込み、子宮内に連続的、
かつ微量に薬剤を放出させるシステムです。ミレーナを装着すると子宮内膜を薄くして
着床を妨げ、子宮入口の粘液を変化させるので精子の子宮内への進入を妨げます。

特徴は
99.8%程度の高い避妊効果の他、ピルの副効用と同じような治療効果が認められる
ことにあります。IUDには最初の数ヶ月間に月経の出血量の増加を見ることが多いのですが、
プロゲステロン添加のIUDでは装着期間が長くなるにつれ月経の持続する日数が短くなり、
出血量が非常に少なくなることが認められています。これは内蔵された黄体ホルモンが
子宮内膜の増殖を抑えるように働く為です。 一方、ごく少数例ですが、逆に月経期間の
延長などの月経周期の変動をもたらすこともあります。個人差があるので、実際のところ
装着してみないと分からない点もあります。ただ、長期間の避妊には極めて有用で、欧州
諸国では非常に多く使用されている避妊器具ですので過度の心配は無用でしょう。

ピルは毎日服用せねばなりませんが、プロゲステロン添加のIUD「ミレーナ52」は毎日
避妊のことを考える必要は全くありません。一旦挿入すれば5年間有効なので、ピル服用
に消極的な人にも良いようにも思えます。ピルと同様に、授乳中の場合は母乳中に内蔵
しているホルモンが移行することが報告されており、他の避妊法がよいと思われます。
出産後は子宮穿孔やIUD脱出の可能性があり、なるべく長期間、少なくとも6週間以上は
挿入を待つべきです。

一方、出産したことのない人にもこの器具を入れることが出来ますが、挿入困難な場合や、
挿入後に子宮に違和感を覚えることなどがあるので、内服するピルが第一選択肢です。


2007年3月執筆 2008年6月加筆 2009年10月加筆 2010年11月加筆 2013年11月加筆
日本産科婦人科学会認定専門医  医学博士 宮本順伯
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