東京都受動喫煙防止条例を世界標準に近づけるための提言 2017

東京都受動喫煙防止条例を世界基準に近づけるための提言
2017

東京都受動喫煙防止条例（2017 提言）宮本順伯

1. 目的：受動喫煙による健康障害を未然に防止し、都民を含む国民の健康確保を図る

2.条例において定めること：
　タバコの有害性は本人の吸い込む主流煙よりも、タバコの先から放出される副流煙のほうが数倍も強い。
　これを防止するため、公共的施設の管理者は未成年者、成人を含めた国民の健康を侵害しないように務める義務がある

3.定義：たばこ事業法で定めている製造たばこ、葉巻、加熱式たばこなどを対象とする

4.関係者に求めること:
　行政機関・・総合的施策の策定、実施、普及啓発、関係者間の連携
　事業者・・受動喫煙による健康への悪影響を防止するための環境整備

5.多数の人の利用する施設：
　不特定多数の人が利用する公共的施設で、室内および屋外の環境を指す

6. 以下の場所は喫煙禁止場所としない：
　個人の住宅
　タバコの有害性の研究に供する施設
　演劇に供する舞台（舞台以外の場所では喫煙禁止）
　自治体、公共交通機関、宿泊施設等が設置した屋外喫煙所（通路横の喫煙所に高さ２ｍ以上の障壁が必要）

7.敷地内禁煙：
　医療施設、教育施設（小学校、中学校、高校)　児童福祉施設

8-1. 屋内全面禁煙
　官公庁施設、老人福祉施設、大学を含む教育施設、体育館などスポーツ施設、
　すべての飲食店内・・小規模店舗を含め、例外を一切認めない
　（商業ビル内に共同で設置する屋内喫煙室は、条例成立後 5年以内に撤去する）

8-2. 車内全面禁煙：
　航空機、鉄道、バス、タクシー、レンタカー
（現在東京都内に乗り入れている鉄道車内の喫煙室は条例成立後 1年以内に撤去する）

9. 原則屋内禁煙（5年以内の完全撤去を条件に喫煙専用室設置可）
　ホテル、旅館、200㎡以上の大規模娯楽施設と事業所、駅、空港ビル、船着場、
　バスターミナル（現在設置されている屋内の喫煙専用室は、条例成立後 5年以内に撤去する）
　・・ホテル、旅館の共用部分は喫煙禁止
　喫煙を許されている客室の比率を全客室の20％以下とする（5年間以内に0％とし、客室内完全禁煙とする）

12. 実効性の担保：
　違反した喫煙者、および施設管理者に罰金を科す（違反者個人には 5 万円、施設には50 万円相当が妥当）

13. 2018年6月に法制化、2019年1月施行

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日本においては「受動喫煙防止」イコール「分煙施設の整備」とする考えがあり、それが受動喫煙対策の
基本とされていることが多いが、それは完全に間違った知識に基づく対応であり、WHOや国内外の
数多くの研究者から指摘されているように、屋内に設けた分煙施設から漏れてくる有害物質は完全に
防止出来ないことが、100％の確実な事実として、科学的に立証されている。そのことが世界の国々の
「屋内分煙施設を排除した条例」の根幹となっている。分煙してるので良いとの考えは明らかな間違いで、
喫煙する部屋を分離しても、その建物内の人々の受動喫煙を防止することは全く不可能なのである。

世界標準への道を歩む：

「屋内に設けられた喫煙専用施設」においては喫煙者自身が、たばこの先から放出される有害な副流煙を
吸い込むと同時に、喫煙者自身が吸い込む有害な主流煙を吸い込み、二重の健康被害を受けることになる。
WHO 第一人者、ベッチャー氏は『日本の対策は「前世紀並み」と判断し、分煙政策は効果がない』と
明確に答えている。北京市の実例、スペインでの分煙制度の失敗を取り上げ、店内に設けた喫煙室は
受動喫煙を防止するものではないし、「壁を隔てた喫煙室を残す」との日本政府原案では、今の世界
最下位から2番目に低い国となるだけだと伝えている。鉄道車内の喫煙ブースは、世界で既に完全に
廃止されており、飲食店内の喫煙室と同じく、無論、乗客の受動喫煙を防止するものではない。

NHK放送で、WHOのマッキー上級政策顧問は屋内に設置されている分煙設備について『喫煙エリアの
煙を完全に防ぐには竜巻並みのエネルギーが必要、完全な分煙など不可能』と断言している。タバコの
先から放出される副流煙は、発がん物質、ニトロソアミン、ベンゾピレン、タール、血中の酸素濃度を
低下させる一酸化炭素、血管収縮を引き起こす依存性神経毒、ニコチンは主流煙の3倍から5倍もの濃度が
あり、こうした有害煙のこもる屋内喫煙所は設置してならない。東京都原案で「煙を外部に流出することを
防ぐ処置を講じるなどした喫煙室」と記載しているが、タバコ有害煙の拡散を完全にブロック出来る
ことなどありえない。それが国際的に認められているコンセンサスである。

多くの国々は屋内喫煙設備を廃止しており、現在、日本政府が進めている喫煙設備への経済的支援への
取り組みは、反社会的、反健康的制度に他ならない。東京都受動喫煙防止条例原案「9項」では専用喫煙
室の設置を多くの業種にて許可しているが、屋内喫煙施設の新規建設は条例成立以降は禁止すべきである。
無論、タバコ主流煙の数倍の有害性を持つ副流煙の充満する屋内喫煙施設整備への経済的支援など、最も
悪い、絶対に避けねばならない政策である。ただ、現在すでに設置されている施設に関しては、鉄道車内は
1年間以内に、その他の施設については5年以内に撤去するように条例で定めるべきである。第二次大戦後に
オリンピックを開催した国、都市で喫煙車両、または喫煙室を設置した車両を走行させている国は皆無である。

ホテル、旅館、職場、娯楽施設、百貨店、駅、空港ビに喫煙設備の設置を認めているが、上記の規制原則
に従い、新規の屋内喫煙設備の設置を禁止し、既存のものは5年以内に撤去すべきことを提言する。
ホテル、旅館の喫煙出来る部屋は、満室の場合に非喫煙利用者が喫煙客室で不本意な三次喫煙の被害に
遭わないように、その比率を最高、20％以下に制限すべきである。5年後には喫煙客室を廃止する。
欧米人旅行者の影響も少なくないが、日本でも既に250以上のホテルが全室禁煙として営業している。

諸外国の喫煙所は、ごく限られた国を除き、すべて屋外に設置している。国内のホテル、旅館でも
屋内でなく、屋外やビル屋上に喫煙所を設置する動きが加速している。百貨店も同様で、新宿伊勢丹では
屋外テラスと屋上に喫煙所を設置している。屋外テラス席の規制に関しては東京都は施策案を提示して
いないが、歩道に面しているテラス席で喫煙した時、歩行者はテラス席から流れて来た有害煙を
強制的に吸わされて受動喫煙被害に合う。歩道に接したテラス席での喫煙は禁止せねばならない。

飲食店内における屋内喫煙設備は、例外なく、完全に禁止しなければならない。東京都原案では小規模
店舗、従業員が同意した場合、未成年者を立ち入らせない店舗を例外としているが、2006年にスペイン
政府が例外規定を設けたものの、2011年に「ただ、抜け穴を作っただけ」とその規制例外の失敗を政府
自ら認めて、飲食店などの屋内を完全禁煙とした事実は、あまりにも有名である。東京都および国は
こうした過ちを繰り返してはならない。飲食店では例外なき屋内全面禁煙のみが国民、都民の命を救う。
喫煙する場所を制限することは、禁煙へのきっかけを付与することにも繋がる。単に健康被害を防止
出来るばかりではなく、業界が一斉に全面禁煙することにより、飲食店売る上げ減少を防止することが
可能となる。

国レベルでも、都レベルでも列車内での喫煙を容認しているが、東京都内に乗り入れているJR 東海道
新幹線列車を含め、遅くとも１年以内に鉄道車内喫煙室を撤去させる法制度の確立が肝要である。

（注）今回の提言は、日本の現状を勘案した上での規制で、レベルの比較的低いものである。
5年後の屋内喫煙専用施設の完全撤廃後に初めて「世界標準」と同等の喫煙規制内容となる。

2017年10月執筆　
受動喫煙防止法の研究が専門　日本タバコフリー学会顧問　医学博士　宮本順伯

　プロフィール
　Footprints on the earth by Dr.J.Miyamoto
　世界各国の喫煙規制の実地検証記述（英文）

「分煙では効果ない」WHOが日本に全面禁煙を勧める根拠とは
・・分煙では効果ない、五輪契機に建物内の完全禁煙を

2017年9月、日本タバコフリー学会で使用されたスライド（宮本順伯）

首都北京市は厳しい喫煙規制法を実施
上海市で屋内全面禁煙を実行
飲食店が全面禁煙となっている50カ国

　従業員のいる飲食店では屋内全面禁煙と、喫煙規制を強化するものの「世界標準」にはほど遠い、
分煙施設支援の東京都受動喫煙防止条例（詳細説明）

「尊敬される清潔な国、日本」となるか、「馬鹿にされた喫煙者天国、日本」となるか、それは
今回の条例の内容如何にかかっている。すでに手遅れとの感を否めないが、私は今回の東京都議会に
与えられた絶好の政治的環境を逃したら、2020年のオリンピックでは、IOCの「伝統的な屋内全面
喫煙規制を反故とした五輪唯一の例外都市」とのレッテルを貼られ、それ以降も長期間、小池都知事は
「都民の健康を守る知事でなく、業界の理不尽な要求に左右される保守的な知事」として、また、
首都東京は世界から見下ろされた「タバコをコントロール出来ない都市」として、軽蔑と嘲笑を
免れることは不可能になると予測している。
2017年9月「一匹狼の国」著者　宮本順伯

「なぜ、受動喫煙対策は進まないのか」日本医師会副会長に聞く」BuzzFeed News
　分煙制度定着のための分煙補助金 (世界の動向に逆行する反健康的制度）
　喫煙率低下防止のため必死に分煙制度を広報するJT

A video created by WHO to stop tobacco-industry-interference campaign.
世界保健機関製作ビデオ

　屋内喫煙行為は憲法違反

日本が2004年に締結署名したWHO国際条約は2010年までに実行せねばならない。
日本が終結した国際条約を守らないことは、日本国憲法第98条第2項違反（憲法違反）となる。

2009年世界禁煙デー記念講演「ドイツ受動喫煙規制法に学ぶ」
　　2008年、規模による喫煙規制はドイツ憲法違反と判断

　塩崎前厚生労働大臣、受動喫煙防止「世界に恥じない法案を」
Minister of Health, Labour and Welfare, Yasuhiro Shiozaki said 'Smoke-free bill should not be ashamed
of the world’.2017

大臣談話では「いまだ多くの国民が飲食店や職場等の『公衆の集まる場』において深刻な受動喫煙の被害に
遭っている」と強調。「国民の多くが成立を望んでいた法案の中身に付き、残念ながら結論に至っていない」
と釈明した上で、2020年東京五輪・パラリンピックに向け「『たばこのない五輪』という伝統を継承する
責任がある」と訴えた。
引用：産経ニュース、2017,6,20

塩崎前厚生労働大臣が、「自民党が求める広範な例外を東京に当てはめると、85％以上の飲食店が例外
扱いとなる。原則と例外とが逆転してしまう恐れがある」との「正論」を小池氏も否定するのであろうか。
都知事選挙のときに、自民党東京議員団が「政府の見解とは異なっても、東京都で屋内全面禁煙制度を
実施する」と述べていたが、小池氏は一旦、都知事の座につくと、今まで対峙していた自民党政府と、
ほぼ同じ喫煙規制を、なぜ行うのか、頭の中の構造が分からない。テレビ写りも大切だが、今、日本の
おかれている異常な事態を直視する必要があるだろう。

　　正論を主張し続けて更迭された塩崎前厚生労働大臣は「屋内原則禁煙、譲らない」
　・・・小規模飲食店の例外を認めると「原則と例外とが逆転」と述べていた

しかし、残念なことに、正しい信念を抱く大臣は、独善を重ねる分煙支持の安倍首相の盟友、
「タバコと肺がん」との関係を疑問視する、麻生財務相の影響も受けたのであろう、その座から解任された。

安倍首相と麻生財務大臣( Huffpost )

代わりに、喫煙自由を主張する自民党たばこ特別委員長と、分煙制度を容認する厚生労働大臣が任命されている。
自民党議員控室は喫煙自由であり、そこで受動喫煙防止法令が審議されているのだ。
そのような野蛮な、非健康的行為を行う政治勢力が日本には今だに存在し、それを支持している国民も少なくない。

タバコが認知機能に影響している可能性を示唆

　受動喫煙対策は世界最低レベル　
　厚生労働省白書 2016
　世界の50カ国では、学校、飲食店、公共交通機関などの公共の場で「屋内全面禁煙」とする法規制を実行
　自国民の健康を守るため徹底した屋内全面禁煙を定めたロシア
　カルフォルニア州では1994年以降、23年間（2017年現在）すべてのレストランは屋内全面禁煙
　カリフォルニア州での喫煙規制後の医療費削減額は15年間で9兆円 (2008年発表）
　屋内全面禁煙の法制化を各国政府に通知
　NHK｢クローズアップ現代」受動喫煙防止
　飲食店が喫煙規制に反対する理屈
　オリンピック開催国で鉄道車内での喫煙を認めている国はない
　日本のホテルにも全室禁煙とする動きが加速（日本全国全室禁煙ホテル）
　レンタカーも全車禁煙の時代へ始動

学会：2017 日本タバコフリー学会総会（東京）：2017年9月
特別講演：宮本順伯「世界の鉄道は全面禁煙喫煙」
シンポジウム：東京オリンピック・パラリンピックまでに日本を完全禁煙に
厚生労働省健康局、産経新聞、朝日新聞、他
　学会：2015 日本タバコフリー学会総会（松山）2015年9月
特別講演：宮本順伯「喫煙規制：今、世界はどう動いているか」
　学会：2013 日本タバコフリー学会総会（東京）
特別講演：宮本順伯「公共的空間を分煙してもタバコの害は防げない。屋内全面禁煙は世界のルール」
日本と先進国とを対比させた喫煙規制政策について
　講演「屋内全面禁煙は世界のルール」：特別講演、禁煙席ネット　宮本順伯
2012年11月第3回えひめ禁煙フォーラム：愛媛県医師会館ホール（松山市）
最近の韓国、米国，ブータンの喫煙規制状況を含め、お話ししました
　学会 2012年第85回日本産業衛生学会（名古屋）
シンポジスト、禁煙席ネット主宰　宮本順伯
講演後演者からのご挨拶：定員を超えたため隣室で視聴された出席者の方々にも御礼申し上げます。
　学会 2010年日本禁煙学会シンポジウム（松山）
多くの地方自治体が先行した神奈川県条例と同様の受動喫煙防止条例を制定すれば
日本は世界先進国で唯一、「分煙体制」を採用した「最も好ましくない喫煙規制国」
となる恐れがあると強く警告

　「一匹狼の国」世界の喫煙規制を検証する(書籍）
　「禁煙席ネット」情報掲示板

宣言　　2018年11月22日　宮本順伯

自己の健康を守るため、飲食店は必ず全席禁煙の店を利用、
どのような状況でも時間分煙、完全分煙の店は利用しません。
ホテル、旅館は原則全室禁煙のところに宿泊します。

世界標準に近づけるための提言：東京都受動喫煙防止条例
Recommendation to the Tokyo Metropolitan Government's Passive Smoking Prevention law to bring it closer to world standards
執筆　医学博士宮本順伯
★This Web site is link-free.
The article was written in June 2017, and finally revised in January 2019,
by Junhaku Miyamoto, M.D., PhD.

Hawaii

The poster of 'Welcome to Smoke-Free Dining' was permitted to use
by the courtesy of Clifford Chang, MPH, director, Coalition for
a Tobacco Free Hawaii, and the associated artists.

Smoke-free Hotel and Travel
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